七都市物語
ISBN:4150303177 文庫 田中 芳樹
早川書房 1990/03 ¥609
突如地球を襲った未曾有の惨事"大転倒"―地軸が90度転倒し、南北両極が赤道地帯に移動するという事態に、地上の人類は全滅した。しかし、幸いにも月面に難をのがれた人類の生存者は、地上に七つの都市を建設し、あらたな歴史を繰り広げる。だが、月面都市は新生地球人類が月を攻撃するのを恐れるあまり、地上五百メートル以上を飛ぶ飛行体をすべて撃墜するシステムを設置した。しかも、彼らはこのシステムが稼動状態のまま、疫病により滅び去ってしまったのだ。そしてこの奇妙な世界で、七都市をめぐる興亡の物語が幕を開くのだった。

読んだ。
満足(笑)。

何度読んでも驚くのが「先制的自衛権」のくだり。
お話しの中で、某都市の独裁者が演説で
「未来の時制における国家的危機が、至近かつ特定の方向からのものであって、しかもその存在が明白であるとき、先制的自衛権を確立してそれを排除することは、為政者の重大な責任であり、市民の神聖な義務である」
と語る訳ですな。
つまり「やられる前にやっちまえ」という理屈で、どのように「やっちまう」かというと
「ただひとつ、必要最小限の軍事力によるしかないではないか」
となる訳。
・・イラク戦争開戦時のアメリカの理屈がまんまソレだったような気がしてならないんだよねえ・・。
当時吃驚したもんな。
そんな無茶な開戦理由は、小説の中だけだと思っていたんだけど。
事実は小説より奇なり。
まさに
「人類の歴史上、ばかばかしくない開戦理由など存在しない」ということなのか。

ところで、このレビューを書く為にだいありーのーとの「ブックレビュー」で「七都市物語」を開いたのだけれど。
amazon.comを見てびっくり。
「七都市物語」も「シェアードワールズ」として新刊が発売されるのか!

・・そうか。やっぱりもう、田中センセの新刊は出ないと言う事なのね・・<物事を悪い方に考えてみた
「七都市物語」が「シェアードワールズ」として続いていくんじゃないかという話しは結構前に聞いた事があるんだけど、実際にそうなるとショックだなあ。
分かってはいたんだけどさ。
それって、今までの主要人物の活躍が見られなくなるということだよなあ。
正直「ドンパチやっているだけ」と評される小説だけど、あの一癖も二癖もある登場人物達がいるから良かった訳で。
その人達が出てこない「七都市物語」は面白くなるのかな・・?
戦争物にするにしても、例の3人に匹敵する様な将才を持った人は出せないし、そうなると「田中芳樹読本」かなんかにあった、「七都市物語外伝」みたいな小さめな話し(笑)にするしか無い様な気が。
う〜ん、それなら『七都市物語』でなくても良いのでは・・?
ある意味一番『七都市物語』らしい話しではあったんだけどさ。

いや別に、羅門さんが嫌いとかそういう訳ではないんだけど!
アタシ、この話大好きだからさ。
いっそ、そっとしておいて欲しかったような気もしなくはないのでありますよ。
でも取り敢えずは読んでみようかな。
 
 

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